最終ロープウェイで、無事に山麓の「久遠寺駅」へと戻ってきました!
ゴンドラを降りて境内へ向かうと、静かだった山の上とはガラリと雰囲気が一変。目の前には、大きなお堂や塔がダイナミックに並ぶ壮大な景色が広がります。ここからは、いよいよ日蓮宗の総本山「身延山久遠寺」を歩いてみます。
まずパッと目を引くのが、さっきロープウェイからも見えていたこちら!

鮮やかな朱色が美しい五重塔です。周囲の深い緑とのコントラストが本当に綺麗で、思わず足を止めてしばらく見上げてしまいました。実はこの五重塔、明治時代の火災で一度失われてしまったあと、2009年に約130年ぶりに再建されたものなのだそう。新しい建物でありながら、木造建築としての風格と歴史の重みをしっかりと漂わせています。
そして、その隣にどっしりと構えるのが大本堂。……お、大きい!!!

それもそのはず、なんと一度に2,500人もの人々が同時に参拝できるという規格外の大きさなんです。……ただ、後から知ったのですが、この中に入ると天井には日本画の巨匠・加山又造氏による巨大な「墨画黒龍」が描かれていたのだとか。……あぁっ、完全に知らずに外から見るだけで帰ってきちゃいました!(笑) 次に来たときは絶対に中に入ろうと思います。
とにかく境内は広大。

大きくて格好いい歴史的建造物がそこかしこに点在。

池には立派な鯉もたくさん気持ちよさそうに泳いでいました。

さて、身延山のパワーを全身にチャージしたところで、そろそろ帰りましょう。帰りのバスが発着する身延山バス停に行くには、ここから山を下る必要があります。

案内図を見る限り、下るルートはいくつかありました。少し遠回りだけど「斜行エレベーター」なるもので楽ちんに下るか、あるいは「男坂」や「女坂」と言われる坂道を歩くか、はたまた「菩提梯(ぼだいてい)」と呼ばれる石段を下るか……。
「ルートの中で、この石段が1番近道っぽいし!」
そんな軽い気持ちで、久遠寺を象徴する「あの超有名な石段」から下りていくことにしたのです。……が、これが大きな間違いでした(笑)。
斜め具合が尋常じゃない。「悟り」の前に恐怖が勝つ石段

巨大な杉の木の間に、まるで壁のようにそびえ立つ巨石の階段。……いや、この階段の斜め具合、尋常じゃなくないですか!?
この石段の名は「菩提梯」。三門と本堂を結ぶ、全287段の石段です。仏教用語で「悟りに至る階段」を意味し、一段上がるごとに心が清められるとされる修行の場でもあるそうなのですが……
あの……下る場合は、特に悟りに至れたりはしませんかね?(笑)

はじめは何となく行けそうな気がして一歩を踏み出したのですが、数段下りたところでその真のヤバさを痛感、すぐさま後悔することになります。

なんとここ、287段・高低差104メートル、傾斜角約50度の超急勾配。高低差だけでいえば、ビル25〜30階分。……そりゃ下を見たら怖いわけです。さらに1段の高さが約30〜40センチメートル前後もあります。一般的な駅や住宅の階段(15〜20センチメートル)の約2倍の高さがあるため、一段ごとに大きく足を出す必要があります。
そのうえ、踏み面の奥行きは約30センチメートル前後しかありません。「高さに対して奥行きが狭い」ため、足を乗せてもかかとがちょっと浮くような感覚になり、体感の斜度はさらに跳ね上がります。
おまけに、寛永9年(1632年)に組まれた自然石の石積みなので、1段ごとに高さも形も微妙にバラバラ。足元をしっかり確認しながら下りないと本気で危険です。
結論:下るのめちゃくちゃ怖い(笑)!!!
「女坂にすれば良かった……」と思うも、引き返すのももう同じくらい無理。進む他ありません。
これ、体力的には上る方が辛いかもしれないけれど、精神的には絶対下る方がヤバいです!上ってないから知らんけど(笑)。本当に一歩踏み外したら、崖みたいに下まで転がり落ちていきそうで、リアルに足が震えるレベルです。手すりをガチ掴みしないと命の危険を感じます。

しかも、足元には杉の落ち葉がいっぱい。滑りそうで怖すぎる……。人生において、花粉以外でここまで杉に怯える日が来るとは思いませんでした。

ちなみにこの菩提梯、江戸時代初期に佐渡の熱心な信者・仁蔵という人が、盲目の母親を背負ってこの山を登った際、「階段があればどれほど便利か」という願いと親孝行の思いから、私財を投じて建立したという美しい言い伝えがあるそうです。
……いや、大変申し訳ないのですが、この傾斜と段差、いくら親孝行でも母親を背負って登るのは絶対に無理では!? もう少しなんとかならなかったのか……なんて言ったらバチが当たりますね(笑)。昔の山道はもっと険しかったのでしょう。それにしても、重機もない時代にこれを作った昔の人の執念は本当に凄まじいです。というか、これ作る時の方が絶対に何倍も怖かったはず……!
永遠に思えた時間の正体と、直立する石の壁
そんなことを頭の中でグルグル考えながら、全然スタスタ下りられず、永遠の時間を彷徨っているような感覚でしたが……な、なんとか無事に下りきりました!!

ホッとして時計を見てみると、なんと10分もかかっていない。
嘘でしょ!? あんなに怯えながら超ゆっくり慎重に下りて、永遠の時間にすら思えたのに。人間の恐怖心による時間感覚のバグ、すごいです。まぁ、結果的に1番近道のルートだったことには変わりないようです、多分。
はぁ、本当に怖かった……けれど、終わってみると「あぁ、面白かった!」と思えるから不思議です。やっぱりエレベーターで楽をせず、この菩提梯で下りてきて良かったなと大満足。そして、たった10分足らずの攻防だったにもかかわらず、いつも使わない筋肉をフル稼働させていたせいで、しっかり筋肉痛になりました(笑)。

下りきった階段脇に、「急階段となっておりますので御注意願います」という看板を発見。……いや、この看板、上(境内側)にも必要じゃないですか!?(笑)

ちなみに菩提梯を境に、横にはちゃんと女坂・男坂の入り口がありました。体力に自信がない方やビビりな方は、どうか迷わずそちらへ迂回してください。
もし私が次に身延山に来るなら、「上りを菩提梯、下りを男坂」とかにするかなと思います。下りは本当にヤバいです、上りは知らんけど(笑)。

最後に三門まで歩き、改めて菩提梯の方を振り返ってみると……もはや階段というより「直立する石の壁」にしか見えませんでした(笑)。

でも、最高の旅の思い出です。

それにしても、この三門、めちゃくちゃカッコいい!!
大迫力の門をくぐり、次回はいよいよバスで身延駅へ。楽しかった奈良田温泉ひとり旅も、いよいよ帰路へと向かいます。
(つづく)↓