美味しい駅弁「竹取物語」と熱々の豚汁を平らげ、お腹は大満足!
ですが、ここから襲いかかってくるであろう「睡魔」に先手を打つべく、眠たくなる前に素泊まり旅の重要なひと仕事を片付けます。

ここ白根館のお布団はセルフ式。つまり、いつでもゴロ寝ができる環境を自分でプロデュースするシステムです。
実は少し前までの私は、恥ずかしながらお布団すら自分で敷いたことがない世間知らずでした。ですが、温泉にどっぷりハマったこの1年で、今や手際よく敷けるまでに成長いたしました(笑)。

スマホを充電しながらゴロゴロできるように、コンセントの最短距離を計算してポジショニング。お布団の設置完了です!
お布団が敷けたら、とりあえず一度横になってみる。そしてそのままウトウトする。……これ、温泉旅の鉄板ですよね?
「食っちゃ寝」なんて日常生活では最悪のギルティですが、旅の夜だけは世界で一番最高のご褒美です。旅の時くらい、自分を甘やかして良いですよね(笑)。
――なんて思っていたら、気がついた時には本気で熟睡。そのまま2時間ほど爆睡してしまっていました。
夜の廊下探検。「鹿の角」と「熊の胆」に潜む秘境の謎
すっきりと目を覚まし、時計を見るといい時間。さあ、夜の温泉へと向かいましょう!
昼間よりも少し照明が落とされ、静まり返った廊下を歩いていると、昼にはスルーしていた気になるものが色々と目につきます。

まずは、壁にドーンと飾られた立派な「鹿の角」。
よく見ると……あれ、値札が付いてる。売ってたんだ、これ(笑)。お値段20,000円。高いのか安いのか、鹿の角の相場がさっぱり分かりませんが、なかなかの存在感です。

さらに歩みを進めると、今度は「熊の胆、譲ります」という、なんともマタギの郷らしいインパクト抜群の古い貼り紙を発見。
(熊の胆って……クマのい、だよね?なんだろう?)と気になってスマホで調べてみると、これは「クマの胆嚢(たんのう)」を乾燥させた漢方薬のことだそう。古くから、あらゆる胃腸の万能薬として重宝されてきた、もの凄く貴重な伝統生薬なのだとか。万能薬だなんて、ちょっと欲しくなります。
ですが、さらに調べていくと衝撃の事実が。現在は、野生のクマから採取された「熊の胆」を個人間で売買することは、医薬品医療機器法(旧薬事法)により原則として禁止されているらしいのです。ということは、この貼り紙は古き良き時代の名残としてそのまま残されているものなのかも。さすが秘境、廊下ひとつとっても歴史の深さがケタ違いです。
22時過ぎの静寂。夜に化ける「七不思議の湯」
さて、お風呂に到着です。

夜の男女入れ替えがあるのかな?と思いましたが、白根館では入れ替えは行われないようです。というわけで、すっかり勝手知ったる我が家のような安心感で、大好きな内湯の総檜風呂の扉を開けます。

ガラリと扉を開けた瞬間、ぶわっと押し寄せる濃厚な硫黄香……!
気のせいでしょうか、昼間に入った時よりも、夜の方が明らかに硫黄の匂いを強く感じます。香ばしくて、温泉好きにはたまらない本当にいい匂い。

薄暗い照明に照らされた夜の檜風呂は、昼間の瑞々しい雰囲気から一転して、もの凄く幻想的で落ち着いたムードに化けています。

相変わらず、お湯は肌にまとわりつくような極上のトロットロ感。
そして時計は22時過ぎ。予想通り、完全なる「独泉」状態です!
はぁぁ……最高すぎる……。
ふと、「こんなに素晴らしい極上湯なのに、他のお客さんは一体いつお風呂に入っているんだろう?」と不思議になります。わざわざこんな山奥の秘境まで来ているのだから、間違いなくガチの温泉好きの方々のはずなのに(笑)。もしかしたら、今日は男性のソロ湯治客ばかりが泊まっていて、みんな早々に寝てしまったのかもしれませんね。
虫の声と夜風に包まれる、真っ暗な野天風呂
続いて、お隣の石造り露天風呂へも移動してみます。

こちらは内湯以上に真っ暗!昼間に見えた鮮やかな新緑の山々やエメラルドグリーンの奈良田湖は漆黒の闇に隠れ、今はほとんど何も見えません。
その代わり、耳を澄ますと優しく響く虫の声。そして、火照った顔の頬を優しく撫でていく夜風が、とにかくめちゃくちゃ気持ちいい……!
五感が研ぎ澄まされていくようなこの感覚。目を閉じると、本当にこのまま朝までずっと入っていられそうな錯覚に陥ります。……が、この極上すぎるお湯の中で本当に寝落ちしてしまったら命に関わるので(笑)、名残惜しいですが強い意志でお湯から上がりました。
ほかほか、つるすべの身体のまま、今度こそ本気で眠るためにマイ布団へ潜り込みます。

明日はどんな朝風呂が待っているでしょうか。

それでは、おやすみなさい……。
(つづく)↓