
下部温泉からバスに揺られること約70分、ついにたどり着いた山奥の秘境・奈良田温泉。
実はこの「奈良田」という地名には、ちょっとロマンあふれる伝説が残っています。
奈良時代、女帝・孝謙天皇がこの地を訪れた際、「奈良の都は七条、ここの地形は七段。なればここも奈良だ」と語ったことが名前の由来になった――そんな言い伝えがあるのだとか。
そうか、てっきり山梨県に来たつもりでいましたが、ここはもはや実質「奈良県」でもある様子。一瞬で2つの県を感じられるなんて、なんだかおトクな観光地ですね(笑)。
この地をすっかり気に入った孝謙天皇は、なんと8年もの長きにわたって滞在し、川から湧き出す温泉で様々な病を癒やしたのだとか。その伝説こそが、ここ奈良田温泉の始まりなのだそうです。
天皇は8年ですが、私は1泊2日のショートステイ。

それでも、今宵の宿――奈良田温泉を代表する秘湯宿「白根館」さんで、心ゆくまでお湯に癒やされたいと思います!

白根館の入り口では、「奈良田温泉」と書かれた味わい深い提灯が出迎えてくれました。

昔はここに「日本秘湯を守る会」の提灯が下がっていたんですよね。こうして宿泊営業を復活させてくれただけでも感謝しかありませんが、いつかまた、あのノスタルジックな会員宿の列に復活してくれたら嬉しいな……なんて、一ファンとして密かに願ってしまいます。
圧倒的な太っ腹!「12時チェックイン可能」という温泉好きへの神対応
いざ玄関の中へ。

居酒屋で見かけるような、レトロな木の鍵がついた靴箱に靴を入れ、帳場(フロント)へ向かいます。

到着したのは15時半の少し前だったのですが、実は白根館さん、驚くことに「12時」からチェックイン可能なんです。
ちょっと凄すぎませんか……? 温泉好きにとっては完全に“神宿”です!
私はどうしても下部温泉で「温泉で茹でたボロネーゼ」が食べたくてバスを1本遅らせちゃいましたが、この宿で過ごせる3時間を天秤にかけたら、なんだかもの凄くもったいないことをした気分になってきました(笑)。次は絶対12時に来よう……!

帳場では、ウェルカム木彫り熊がお出迎え。

周囲を見渡すと、見事な鹿の剥製などもたくさん飾られており、一気に山深い秘湯の宿へ来た実感が湧いてきます。

宿帳に記帳を済ませると、とても感じの良いお兄さんがお風呂のシステムなどを丁寧に説明してくれました。鍵と浴衣を受け取り、今日のお部屋へは自分で向かうスタイルです。

手渡された鍵には、これまた渋い「何の動物の角だろう?」という素材のキーホルダーが付いていました。
階段の脇にまさかの……!木の温もりに包まれたモダンな館内
さあ、部屋へ向かおうと帳場前の階段を上りかけた、その瞬間。
「うわっ、熊……!?」

なんと、階段脇のスペースに小熊の剥製(?)がディスプレイされているではないですか。
よくよく見れば、つぶらな瞳をしていて結構可愛いのですが……クマの出没トピックが多いこのご時世、不意に出会うと心臓に悪いです(笑)。
かつては猟師でもあった館主さんが自ら仕留めた、シカやイノシシといった野生肉(ジビエ)料理が夕食に並ぶ宿として名を馳せていた白根館さん。現在は素泊まりのみの営業となっていますが、いつかあの唯一無二の食事付きプランも復活してくれたら最高ですね。
そんな歴史に思いを馳せながら2階へ上がると、館内は木を基調とした非常に洗練された空間が広がっていました。
中央が吹き抜けになっていて、天井から自然な光が優しく差し込む設計がとても心地良いです。

そして、今宵私が引きこもるお部屋はこちらの「二十番」。

次回は、素泊まりひとり旅の快適な相棒となってくれる、お部屋の様子をレポートします!
(つづく)↓