大満足の朝ごはんを終えたあとは、チェックアウトまで館内をじっくり散策することにしました。
ここ福田家さんは、単なる「伊豆の踊子ゆかりの宿」という言葉では片付けられないほど、歴史の断片がギュッと詰まった場所なんです。
圧巻のサインと、六代の「踊り子」たち
まず玄関前で目を引くのが、信じられないほど大量のサイン色紙!こんな置き方見たことない…!

軽く100枚は超えていそうなその数に、この宿がどれだけ多くの人に愛されてきたかを実感します。
ロビーへ向かうと、そこはまさに「伊豆の踊子」のミュージアム。

歴代の映画で踊り子を演じた六代(田中絹代、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子、山口百恵)のサイン入りスチール写真や脚本がずらりと並んでいます。

それにしても、吉永小百合さん……本当に可愛い!そして、あっ、この写真、本当に私の泊まってる部屋が使われてる…!小百合さまと同じ空間に居るって嬉しくなります。

壁には川端康成がロビーでくつろぐ写真も飾られていて、「あ、今まさにここ!この床、このままだ!」なんて思える瞬間がたまらなく楽しいのです。

川端康成と大女将の「ごめんね」エピソード
ロビーに飾られている、ある「毛筆の原稿用紙」。

これには、福田家さんならではの面白いエピソードが隠されていました。
川端康成は『伊豆の踊子』を発表した後も、晩年まで何度もこの宿を訪れました。ある時、大女将はこの大作家に「物申した」のだそうです。
「物語の舞台は明らかに福田家なのに、なぜ作中に宿の名前を出してくれなかったの?」
これに対し、川端康成は「すまん、すまん」と謝り、その証拠として物語の一部を改めて原稿用紙に清書して寄贈したのだとか。大作家をタジタジにさせる大女将もすごいし、素直に謝って筆をとる川端康成もチャーミングで、お二人の信頼関係が透けて見えるようです。
資料室に眠る、文豪たちの足跡
さらに奥の資料室へ進むと、お宝の山が待っていました。

- 太宰治や井伏鱒二の宿帳(本物がここにある凄み!)

- 歴代の『伊豆の踊子』初版本も!

- 宿が紹介された膨大な雑誌のストック
「やっぱりみんなこのアングルで撮るよね」という福田家さんの写真が並んでいて、カメラマンさんに親近感がわきます(笑)

館内の至る所に飾られた踊り子の絵や人形も可愛らしいです。資料室ではテレビで物語の映画を観ることもできます。
「天上人間會相見」に込められた心
大女将のご主人が亡くなった際に、川端康成が寄せたという書もありました。

「天上人間會相見」
天国に召された人とも、心の中ではいつでも会える。そんな意味が込められているそうです。冷徹な観察眼を持つイメージの強い川端康成ですが、この宿で見せる姿は、どこまでも温かく人間味に溢れています。
見どころいっぱいのロビーと資料室。100年前の文学の世界と、今ここにある現実が、不思議な優しさでつながっているのを感じたひとときでした。
さて、名残惜しいですが、いよいよこの宿ともお別れ。次回、福田家チェックアウト
つづく↓